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東京地方裁判所 昭和47年(借チ)2066号・昭47年(借チ)2085号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔主文〕1 中丸幸雄から矢作りんに対し別紙目録(一)記載の借地権および同(二)記載の建物を代金四、〇八八、七〇〇円で売渡すことを命ずる。

2 中丸幸雄は矢作りんに対し、矢作りんから前項の金員の支払を受けるのと引換に前項の建物について所有権移転登記手続をせよ。

3 矢作りんは中丸幸雄に対し、前項の所有権移転登記手続と引換に、金四、〇八八、七〇〇円を支払え。

〔決定理由〕一 本件の資料によれば、申立人からの土地賃借権譲渡許可申立および相手方からの建物および土地賃借権譲受申立はいずれも適法と認められるので、借地法第九条の二、第三項の規定により本件建物および借地権の対価を定めて申立人から相手方への譲渡を命ずべきである。

二 鑑定委員会は、相手方が本件建物および借地権を譲受ける場合の対価について「本件土地の更地価格は一平方米当り七九、〇〇〇円、借地権価格はその七〇%で五五、三〇〇円、総計四、三一七、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切すて)であるところ、地主が借地権を買取る場合には、通常借地権価格の一〇%程度(通常地主の承諾料に見合うものと考えられる)減価した価格で買取るのが通例であるので、右借地権価格を一〇%減額する、さらに、相手方は昭和四四年七月本件借地契約の期間を二〇年と定めた際、示談金として約二一万円を受領しているので、このうち期間未経過分一八万円を申立人に返還するのが妥当であるので、これを加算し、結局本件借地権買受の対価相当額は四、〇六五、〇〇〇円である。建物価格は七九、七〇〇円である。」旨の意見書を提出した。

相手方は、右意見書による本件借地権の対価相当額は不当に高額であると主張し、不動産鑑定士補石井敬二作成の不動産鑑定評価書を提出した。右鑑定評価書には、本件土地の更地価格は一平方米当り七一、四〇〇円、総計五、五六六、〇〇〇円、借地権の価格は更地価格の七〇%、名義変更料は更地価格の一〇%が相当である旨の記載がある。

三 そこで、鑑定委員会提出の意見書(以下単に意見書という)と相手方提出の鑑定評価(以下単に評価書という)を比較検討する。<中略>

……意見書と評価書とでは、規準価格(意見書においては(A)、(B)例の平均値)において約一%、個別的要因による減価率において約四%の差があるが、両評価とも不動産鑑定評価基準等に照し、特に不当な点があるとは認められず、右程度の誤差は土地価格の評価という性質上やむをえないものと考えられる。

四 右に検討したとおり、意見書、評価書はその内容からのみではいずれが正当なものかを決することはできず、両者の差は、一定の評価基準を具体的に適用する際に、鑑定人の学識、経験の上にたつたいわば直感に委ねられている部分について、見解に差があつたことによるものと思われる。

ところで、評価書は事件の一方当事者の依頼により作成されたものであり、意見書は事件当事者と関係なく裁判所が選任した不動産鑑定士、弁護士、一般学識経験者によつて構成される鑑定委員会の作成にかかるものである。

当裁判所は、意見書と評価書の相違が前記のようなものである以上、鑑定委員会の意見を採用するのが鑑定人の構成かからいつて公正かつ相当と考える。

よつて、本件土地の更地価格は一平方米当り七九、〇〇〇円、借地権価格はその七〇%(意見書、評価書とも同じ)の五五、三〇〇円、総額四、三一一、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切すて、なお意見書の総額は違算と思われる)と認める。

五 借地人が借地権を第三者に譲渡する場合、賃貸人に対し譲渡承諾料を支払う慣行があり、またそれは衡平の見地から相当であると認められるから、賃貸人が自ら借地権を買受ける場合には借地権の対価相当額から右承諾料相当額を控除してその価格を定めるべきである。

鑑定委員会の意見は、本件における借地権譲渡承諾料は借地権価格の約七%に当る三〇二、〇〇〇円と評定しながら、地主が買受ける場合の対価算定については前記のように慣行による一〇%の減価をなし、それに本件の特殊事情を考慮して示談金の一部を返還させるのが妥当としている。

当裁判所は、賃貸人が買受ける場合の借地権の対価は客観的借地権価格から当該契約上の事情を考慮して算定される譲渡承諾料を差し引けば必要にして充分と考える。けだし、賃貸人の優先買取権を認めた根拠には、借地人にとつて借地権を第三者に売却しても賃貸人に売却しても投下資本の回収という経済的な面では同じ効果が期待できることが前提となつており、賃貸人に売却したがため不利益を受けたり、あるいは利益を受けるいわれはないからである。思うに、鑑定委員会は本件譲渡承諾料を評定するに当り、承諾料の慣行率が借地権価格の五〜一〇%であるところ、本件では前記示談金が支払われていること、借地残存期間が一七年あること等の事情を考慮して七%と評定し、一方、地主が買受ける場合の価格については控除すべき承諾料を慣行率によつて一〇%としたうえ、本件の特殊事情による調整を示談金の一部を返還させることによつて果たそうとしたものと思われる。しかし、右示談金の性格は本件資料によつても明確ではなく、かりに、右金員が二〇年の借地期間に応じたいわゆる権利金で、この支払によつて二〇年の期間が保障されているものとしても、本件は借地権が残存期間を有することを前提にしてそれに応じた交換価格による売買であり、借地契約が解約される場合であればともかく、借地権が存続するものとして売買の対象とされ、それに応じた対価が定められる以上、さらに相手方に右金員を返還させる理由はない。

よつて、本件借地権譲渡の対価は前記借地権価格四、三一一、〇〇〇円から鑑定委員会の意見による借地権譲渡承諾料三〇二、〇〇〇円を控除した四、〇〇九、〇〇〇円をもつて相当と認める。なお、前記評価書の名義変更料の慣行が更地価格の一〇%であるとの点は、その慣行率について本件の鑑定意見および従前本件と同種事件で当裁判所に提出された鑑定意見書に照らし高率に過ぎ、また右は本件契約の具体的事情を参酌したものではないので採用できない。

本件建物の価格は鑑定委員会の意見どおり七九、七〇〇円と認める。

六 よつて、本件建物および土地賃借権の対価を合計四、〇八八、七〇〇円と定め、主文のとおり決定する。

(河村直樹)

目録

(一)賃借権の内容

1目的土地

東京都北区赤羽二丁目二九九番

宅地二七一、九三平方米のうち七七、九六平方米

2当事者 賃貸人 矢作りん

賃借人 中丸幸雄

3目的 木造その他の堅固でない建物所有

4期間 昭和六四年七月一六日まで

(二)建物

家屋番号 二九九番

木造瓦葺平家建居宅 四〇、三三平方米

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